今回は建築編と称して、道路後退と隣地後退のお話をしたいと思います。 マンションや一戸建てなど、建っている建物をご購入される方はあまり意識されないかもしれませんが、土地を買ってこれから建てようと考えられている方には気になるお話です。 ここでいう ”後退” とは建物の外壁が道路との境界、または隣地との境界からどれくらい離れていなければいけないか、という規制のことです。隣人との権利の視点から定めている民法上の規制、全国的な建築基準を定めた建築基準法上の規制、また地域ごとの都市計画による条例、規則、要綱による規制など、様々なものがあります。 例えばこのような約200㎡の整形地を考えてみて下さい。 皆様の地域で200㎡の土地というとどのぐらいのイメージでしょうか。都心だと結構な大きさの豪邸が建つ土地のイメージかもしれません。 この約14m × 約14mの約200㎡の土地に建物を建てたいと思った時、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。 「道路側になるべく建物を持ってきて庭を広く取りたいな。」 とか逆に 「プライバシーを保つために道路から少し奥に建物を建てて、道路側を庭にしたいな。」 など様々なイメージを持つのではないでしょうか。 道路後退、隣地後退というのは、主に街並みや景観を守る目的で道路からの後退距離、隣地境界からの後退距離を定める規制です。これにより、上に挙げたような建物配置のイメージはある程度制限を受けることになります。 建築基準法上の規制から見ていきます。 建築基準法では第一種低層住居専用地域、および第二種低層住居専用地域(どちらもいわゆる店舗などがなく、住宅と学校ぐらいか無い地域、と簡単にイメージ下さい)において、1mもしくは1.5mの外壁後退距離を定めています。 例えば1mだとするとこのようなイメージです。 都心の閑静な住宅地ではこのような建て方をしている家が多いのではないでしょうか。上の図の「200㎡の土地に約144㎡の建築面積の家(このまま2階建てだとする約288㎡)」はかなり大きい家ですが、例えばこれが土地が100㎡(10m × 10m)だとすると、1mずつ下がって建築面積8m × 8m=64㎡(このまま2階建てで128㎡)の家というのは都心部でも少し大きめの家として普通にある家のイメージと思います。 地域の都市計画で何も他の規制がなければ、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域(いわゆる普通の住宅地)では、この規制のみで建物が建てられます。地域によっては第一種低層住居専用地域でも第二種低層住居専用地域でもこれら後退距離を特に定めていない地域もあります。その場合は民法の「50cm」という後退距離を守って建てれば特に問題は起こらないことになります。 さてこれが地域の都市計画によってこれよりさらに厳しい規制がかかるとどうなるでしょうか。 実は当社の営業する軽井沢町ではこのような規制があります。都市部でも特に景観を守らなければいけない地域では長い後退距離を定めている地域があります。 軽井沢の第一種住居地域(いわゆる別荘地ではなく、定住者の多く住む地域で、住居、学校の他に店舗、飲食店、ホテルなどもある地域と簡単にイメージ下さい)では「道路後退2m、隣地後退1m」が定められています。軽井沢町の自然保護対策要綱という、町独自の規制です。他にも横浜市の一部地域で「道路後退2m、隣地後退1.5m」が定められています。 数字だけ見るとわずかのように見えますが、1m後退距離が増えると、建築可能面積はだいぶ変わります。 いかがでしょうか。道路後退1mの144㎡に比べ、道路後退2mの場合は23㎡減って約121㎡という計算になりました。この場合は200㎡の土地という前提ですが、仮に前提を変えて100㎡(10m × 10m)の土地に道路後退2mだと、建築可能面積は49㎡(7m × 7m)となり、2階建てでも100㎡の家は建たないことになります。 この道路後退、隣地後退距離、実は建築可能面積に大きな影響を与えることがお分かりいただけると思います。 ここからは軽井沢で不動産をお求めの方に限定のお話になりますが、実は軽井沢の別荘地(第一種低層住居専用地域)にはさらに厳しい規制がかけられています。全国でも他に例がない「道路後退5m 隣地後退3m」という規制です。 どうでしょうか。。。。
建築可能面積はなんと「約36㎡」になってしまいました。 実は軽井沢には他にも建ぺい率(土地の広さに対する建築面積の割合)と容積率(土地の広さに対する建物総床面積の割合)がそれぞれ「20%」という上限規制があり、この例でそれに倣うと200㎡ × 20% = 40㎡までの建物総床面積の家しか建てることはできません。この200㎡の土地の例では「36㎡の平屋建物」を建てるのが精一杯というわけです。軽井沢である程度の大きさの家を建てるには、最低でもそれなりの大きさの土地(だいたい100坪 ≒ 330㎡程度)が必要とよく言われますが、この辺の規制が大きく影響しています。 この道路後退、隣地後退の規制ですが、民法の「0.5m」、建築基準法の「1mか1.5m」以外の、地域の規制による部分がとても重要です。 不動産広告には正確なことが書いていない(書くことが義務付けされていない)ことが多いですし、契約の際にも例えば「軽井沢町の自然対策保護要綱により規制される場合があります」とだけ重要事項説明書に書いてあり(法的にはそれでも良いのです)、その地域特有の規制(要綱や条例)に書いてある具体的な数字を買主様に説明せずに、後でトラブルになるケースも有ると聞きます。 物件探しをする際、広告を見て問い合わせる際などはこうしたことも頭の片隅に置いて、業者と話をしてみましょう。 ちなみに当社では営業スタンスとして、このような表示義務や説明義務はないけれども、お客様が知っておいたほうがいい情報(規制のみならず物件の知りうる瑕疵なども)は積極的に予めお話するようにしています。また一級建築士事務所との提携で建築と不動産を総合的にコンサルティング、ご提案を行う体制を整えることにより、不動産専業の業者があまり詳しくないであろう建築規制の話もお話できると自負しています。お困りのことがあればぜひ一度お問い合わせください。
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